Books and Travel

訪問地をよく知るための本や、映画、マンガのご案内

【フィレンツェ】悪魔のパス 天使のゴール/村上 龍

イタリアサッカーリーグ セリエAで活躍する日本人選手と、彼の周囲で巻き起こる奇妙な事件をとりまく物語。
サッカー界の裏側の話ももちろんだが、サッカーチームのあるイタリアの街や
そのサポーター達のメンタリティが生き生きと描かれている。

特に劇中何度も登場するフィレンツェにあるフィオレンティーナのホームスタジアム
スタディオ・アルテミオ・フランキまでの道のりは
スタジアムに近づくにつれ胸の高鳴りが大きくなるあの興奮をとてもうまく描いている。
モデルになっているサッカー選手は元日本代表 中田英寿選手。
作者の村上龍氏との交友の中で培われた信頼関係や、食や異文化へ興味が
とてもうまく絡み合った小説。

 

悪魔のパス 天使のゴール (幻冬舎文庫)

悪魔のパス 天使のゴール (幻冬舎文庫)

 

 

【香港】未必のマクベス/早瀬 耕

日本のIT企業の香港支店を舞台にした経済サスペンス小説。
ITに関してはインターネットセキュリティが中心で、現在のネットワーク技術の裏側の仕組みに関してもとても面白く描かれている。

香港を中心にマカオ、中国、東南アジアの国々を歴訪するような内容のため、
エアラインのアライアンスや、ホテル名なども実名で多く出てくる。

主人公の同級生との切なく儚い思い出が、様々な場面で伏線となって繋がってくる様は圧巻。
淡い恋愛模様と、迫り来る現実が、ゴミゴミとした香港の路地や街並みにリアリティと 

没入感を与えている。
経済小説の名作と呼んでも過言ではない。

 

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

 

 

【ミュンヘン】Blue Giant Supreme1/石塚真一

Jazzの名作マンガBlue Giantの続編、第1巻目。
主人公が初めて海外に降り立つ。
冬の寒々としたドイツの空気。
周囲の人々が抱く感情や、初海外での孤独とそれを打ち破っていく力強さが生き生きと読める。

 

BLUE GIANT SUPREME 1 (ビッグコミックススペシャル)
 

 

【ベネチア】緋色のヴェネツィア/塩野七生

水の街ベネチアは”世界で一番美しい街”とも言われ、世界各地には〜〜のベネチアという異名を持つ場所が沢山ある。

そんな美しい街ベネチアの歴史が、サスペンス調で書かれた本です。
舞台は16世紀前半のベネチアを中心とした地中海沿岸地域。
トルコ、スペイン、ローマ帝国との繊細で微妙な関係性や、歴史を紐解く上でもとてもわかりやすく描かれている。

ベネチアのシンボル”聖マルコ広場”や”リアルト橋”など実在の地名も出てきますが、
描かれたこの時代と、21世紀の現代とも、おそらくそんなに見ている景色は変わらないのではないか?と思える。
 

緋色のヴェネツィア―聖(サン)マルコ殺人事件 (朝日文芸文庫)

緋色のヴェネツィア―聖(サン)マルコ殺人事件 (朝日文芸文庫)

 

 

【シンガポール】タックスヘイブン/橘玲

税逃避地という怪しげな異名を持つ地域は世界各地にある。
名高いのは先日米朝会談が行われた地でもある、東南アジアの金融中心地でもあるシンガポールだろう。
"タックスヘイブン"というタイトルの通り、金融が中心の小説だが、同級生同士の淡く感情や、成長し変わりゆく仲間と離れていく感情が切なげに描かれれている。

登場人物の中心は30代。
”オーチャード”や”ロバートソンキー”などシンガポールの実際の地名も登場する。
もしこのあたりに宿を取りこの本を読んだならば、
綺麗に整備された街が、怪しげな闇を隠し持っているように見えてくるかもしれない。

 

タックスへイヴン Tax Haven (幻冬舎文庫)

タックスへイヴン Tax Haven (幻冬舎文庫)